てがみ―昔の私へ―
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Sが生まれた次の日のあなたへ Sが生まれた次の日、病院でSにはダウン症の疑いがあると言われましたね。 高齢出産だったけど、流産を心配して羊水検査をしなかったあなた、障害のある こどもがまさか私の所にはこないだろうとタカをくくっていたあなた、ショック でしたね。目の前が真っ暗でしたね。なんで私なの?なんで?私の将来はどうなるの? 私の仕事はどうなるの?私のしたいことは????? ショックと不安で、慰めてくれる周りの声はうつろ、泣いてばかりいましたね。 障害の子が生まれても一緒に育てていこうと言っていた夫は海外、一報で腰を抜かした といっていた夫がその時他に何を言ったのか今でも思い出せません。夫だけでなく、 周りの慰めのことばも何一つ耳に残っていません。 Sを見て授乳もできない私に、看護婦さんが、あかちゃんは育てられる人の所を 選んで生まれてきたのよといってくださったような。でも選んでくれなければよかった のにと恨んで、2、3日泣き続けましたね。ただただ泣き続けましたね。 泣きつかれて3日め、私はなんでないているんだろう?と思いましたね。そう、 なんでないているんだろう? ふと、大学で学んだお経の一節「如実知自心」という言葉が思い浮かびました。 すなわち「あるがままの自分のこころのありさまを見る」ことだと解釈して、 なぜ泣いているのか自分の心を突き詰めていきました。そこには生まれてきた Sのことは全くなく、自分のことばかり。自分のために、自分が可哀そう可哀想と 泣いていましたね。 さあ、こんな私に今の私から、どんな手紙を出しましょうか。慰めるつもり などないし、泣けるだけ泣いてください。泣き疲れたら、未来の私のことばを きいてください。 まず、あなたの今はかわいいと思えない息子は、とってもかわいい子に成長 しました。心配いりません。あなたとあなたの周りの多くの方々のおかげで。 ではいま茫然としているあなたはこれからどうしたらいいのでしょう。 それは、時間をかせぐこと。忍耐なんていうと、やる気が失せますが。時を かせぐんです。時間はあなたの味方です。時がたてばたつほど、子どもは成長し。

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