カルボシステインによるヒト肺胞上皮細胞への肺炎レンサ球菌の

付着抑制効果 (杏林製薬株式会社との共同研究)

 

　肺炎レンサ球菌 (Streptococcus pneumoniae) の付着因子の一つであるホスホリルコリンは，宿主上皮細胞上の血小板活性化因子レセプター (PAFR) へ結合し，上皮細胞への菌体付着を促進する．特に高齢者では，ウイルス等の先行感染による炎症に伴い，肺胞上皮細胞上にPAFRの発現が誘導され，菌体付着が助長されるため重症化につながると考えられている．本研究では，気道粘液修復薬であるカルボシステインについて，肺炎レンサ球菌感染症に対する予防薬としての有効性を評価した．

肺胞上皮細胞の慢性炎症モデルを用いて，肺炎レンサ球菌の細胞付着に対するカルボシステインの抑制効果を検討した．カルボシステインは，PAFR発現細胞への肺炎レンサ球菌の付着を抑制した．また，ウエスタンブロット解析によって，肺胞上皮細胞におけるPAFR発現量は，カルボシステインの処理濃度に依存して低下することを確認した．さらに，感染細胞ではPAFR発現部位への菌体の局在が観察され，これはカルボシステイン処理により抑制されることを免疫蛍光顕微鏡法により確認した．

 

以上の結果より，カルボシステインはPAFR発現量を低下させ，肺胞上皮細胞への肺炎レンサ球菌の付着を抑制することが示唆された．