小児歯科では,初診時 0~15歳ぐらいの小児におけるう蝕や歯周疾患に対する治療をはじめ,以下のような症例を扱っています.また,治療困難児に対する治療や様々な全身疾患を有する小児の治療も行っています.
・外傷歯に対する処置 ・中心結節・骨性癒着歯への対応 ・幼若永久歯の処置・形成不全歯の管理 ・先天欠如歯に対する暫間補綴 ・正中埋伏過剰歯の抜歯 (以下は自費診療) ・フッ素塗布・保隙装置の装着 ・矯正治療上の便宜抜去・歯周病原性細菌検査 |
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科長 | 仲野和彦(日本小児歯科学会専門医指導医) |
副科長 | 大川玲奈(日本小児歯科学会専門医指導医・日本障害者歯科学会認定医) |
外来医長 | 鋸屋侑布子(日本小児歯科学会専門医) |
病棟医長 | 大継將寿(日本小児歯科学会専門医・日本スポーツ歯科医学会認定医) | 門田珠実(日本小児歯科学会専門医) | 末廣雄登(日本小児歯科学会専門医) |
大川玲奈 大継將寿 鋸屋侑布子 奥田真琴 落合まりん 門田珠実 苅谷里奈 呉本勝章 作田友貴 佐々木秀和 佐々木有美 庄田智美 末廣雄登 髙木美里 東條文和 仲野和彦 永山佳代子 夏江華瑠奈 林 大祐 藤崎舞香 増田勝彦 三笠祐介 三原広吏 村中 綾 山中佑真 吉田茉里
小児歯科では、初診の時点で0歳から中学校卒業くらいまでの患者さんを担当しています.これは、乳歯が生え始めてから親知らずを除く全ての永久歯が生え終わる頃の年齢に当たります.3歳頃までは、歯科医師とのコミュニケーションを取ることは難しく、お子さんが診療室にいる間は、保護者の方にも同席していただいています.この時期は、よほどの理由がない限り、むし歯の進行を止める処置や予防処置がメインになります.
一方で、個人差はありますが、3歳を過ぎた頃から、歯科医師とのコミュニケーションを取ることができるようになってきます。この時期からは、本格的な治療を開始できるようにしていきます.保護者の方には、できるだけお子さんの傍を離れていただき、お子さんと担当歯科医師との間で1対1の信頼関係を築くようにしていきます.最大の難関は麻酔を行うことですが、子どもの目線が及ばないところに器具を配置して操作したり、できるだけ針の痛みを感じにくいようにしたり工夫しています.実際にむし歯を削り取る前には、処置内容をお子さんに簡単に説明した上で、全ての処置内容を鏡で見せて説明しながら行っていきます.また、基本的には「ラバーダム」という装置を使用して、処置する歯だけを露出させて、その他の部分はラバーシートで覆ってしまいます(写真).そうすることで、子どもにとって処置する歯が分かりやすくなるだけではなく、処置時に生じる水や用いる薬剤が喉の方に流れていかないようにできます.また、むし歯を削り取っていく際に、器具で粘膜や舌などを傷つけることを防止する効果もあります.
治療を上手に受けられないこともありますが、保護者の方には十分褒めてもらうようにお願いしています。子どもにとっては、保護者の方から褒められることが、何よりもうれしいものです.重要なことは、保護者の方と担当歯科医師とが信頼関係を持って、お子さんのむし歯治療に臨んでいくことです.一概にむし歯といっても、それが生じた背景や治療の進み具合には個人差があります.お気軽に小児歯科のスタッフにご相談ください.
「乳歯はどうせ生え代わるからむし歯になっても放っておこう」と考えたことはありませんか?図1に示しますように、2歳半から3歳頃に生えそろった乳歯は5歳半から6歳頃に生え代わりはじめ、一般的には小学校を卒業する頃までには永久歯に置き換わっていきます。将来永久歯に生え代わる乳歯は、むし歯になっても放っておいてよいのでしょうか?
一例として、むし歯が非常に多い4歳の子どもの口の中の写真を示します(図2)。この子に起こっている問題は、単に見た目が悪いということだけでしょうか。まず第一に、歯の痛みがひどいのではないかと想像できます。次に、噛みにくくなってしまっており、食事が思うように取れなくなることが挙げられます。また、むし歯によってできたスペースに向かって後ろの歯が寄ってくることで、将来永久歯が生えるスペースが失われて、歯並びが悪くなることも危惧されます。さらに、このようにひどいむし歯は、歯ぐきの腫れや顔面の腫れを引き起こす原因になり得ます。
乳歯の時にむし歯の多い人は、永久歯になってもむし歯が多い傾向にあります。食生活の習慣等も関係しますが、乳歯の時にむし歯の多い人は、その後もむし歯菌を多く持つ人になってしまうことにもよります。小児歯科では「健全な永久歯列を育成する」ということをモットーにしていますが、そのためには乳歯を生え代わりまで健全に保つことが重要です。また、できてしまったむし歯はできるだけ早く治しておくことが重要です。
子どもの歯は下あごの前歯から通常6歳前後で抜けはじめて、順次大人の歯に生え変わっていきます。その後、12歳頃まで子どもの歯から大人の歯への生え変わりが続きます。しかし、歯のけがによって、本来の生え変わりの時期よりも早い時期に子どもの歯が抜けてしまったり、歯を抜かなければならなくなったりする場合があります。
子どもの歯が早くに抜けてしまった場合、そのまま放置していると、見た目が悪いだけでなく、食事がしにくかったり、発音に影響が出ることがあります。また、歯が抜けた場所に舌を入れてから飲み込む癖がついてしまい、その後の歯並びにも影響することも考えられます。さらに、子どもの歯の最も大切な役割である「大人の歯が生えてくるためのスペースの確保」が難しくなり、大人の歯が生える際に問題になる可能性があります。
そのような子どもたちには、「子どもの入れ歯」を入れるようにお勧めしています。入れ歯を入れることができるようになる時期は、歯型が上手に取れるようになる3歳から4歳頃が目安となります。入れ歯を入れ始めてからは、大人の歯が生えてくるまで定期的なチェックが必要です。顎の骨の成長を妨げないような設計にしてはいますが、成長発育に応じて、調整や作り変えが必要となることがあります。
歯のけがによって子どもの歯が抜けてしまった場合の入れ歯は、健康保険が適応されるようになっています。詳しくは、小児歯科担当医にご相談ください。
第一大臼歯は、6歳頃に乳歯の奥から生えてくるため、6歳臼歯と呼ばれることもある永久歯です。咬む力が一番強く、咬み合わせの中心となるとても大切な歯です。しかし、咬み合わせの溝が深いことや、生えてくるのに時間がかかるので汚れが溜まりやすいです。また、乳歯の後ろから生えてくるので歯磨きが難しいことや、生えたての歯のため歯の質が未熟であることなどの理由から、とてもむし歯になりやすい歯です(写真1)。
この大切な第一大臼歯のむし歯予防として、小児歯科ではフッ化物の塗布とフィッシャーシーラントをお勧めしています。フッ化物は歯の質を強くし、特に歯の質が未熟な永久歯ではフッ化物を取り込みやすいので効果的です。ご家庭でフッ化物を配合した歯磨き粉やジェルを使っていただくこともお勧めします。また、フィッシャーシーラントは、咬み合わせの溝の深い部分にフッ化物を含有したセメントやプラスチックを流し込むことによって溝をふさぐ方法です(写真2)。歯の溝をきれいに清掃してから、生えかけの時はセメントで仮づめし、完全に生えた後はプラスチックを用いて溝をふさぎます。歯を削る詰め物とは違いますので、永久的な効果はありません。欠けたり、取れたりしていないか、定期的なチェックが必要です。さらに、第一大臼歯専用の歯ブラシを用いた保護者の方による仕上げ磨きもむし歯予防に有効です。
もちろん、第一大臼歯が生えてくるまでに、乳歯のむし歯があれば、しっかりと治療して、お口の中の環境を整えることが大切です。小児歯科では、お子さんのお口の成長発育に応じたむし歯予防を行なっていますので、担当医にお気軽にご相談ください。
乳歯の時期の歯並びと咬み合わせの異常として、反対咬合(受け口)があります(図1)。治療に際しては、歯型を取ったりエックス線撮影をしたりして、歯並びと咬み合わせの分析を行います。一般的には、少しずつ歯科治療ができるようになる3歳頃から分析と治療が可能になります。分析の結果、乳歯の時期に治療することによって、正しい永久歯の歯並びや咬み合わせを誘導できる可能性が高い場合は、保護者の方に治療の意義と方法をご説明し、ご希望があれば治療を行います(保険適応外です)。
治療に用いる一般的な装置は、図2のような歯に固定するタイプになることが多いです。装置を入れた後はひと月に1回程度受診していただき、針金を調整することによって歯を移動させます。歯には弱い力しかかかりませんので痛みが出ることはまれですが、ガムなどの粘着性の食べ物で装置が壊れてしまうことがありますので注意が必要です。治療期間は概ね半年から1年程度になりますが、永久歯への生え変わりまでの定期的なフォローが必要です。
反対咬合をはじめお子さんの歯並びや噛み合わせで気になることがあれば、お気軽に小児歯科担当医までご相談ください。
近年、むし歯がなく歯が健康であるにもかかわらず、上手に食べられない、上手に話せないなど、お口のトラブルを抱えている子どもたちが目立つようになってきました。
食べること、飲むこと、話すこと、呼吸することなど、日常での正常なお口の働き(口腔機能)は、全身の健康の維持や生活の質の向上に欠かせません。これらの働きは、歯だけでなく唇、舌、頬などが複雑に連動することで成り立っています。食事や周囲との関わりを通して、日常生活の中で本来自然に身についていた口腔機能が、子どもたちを取り巻く生活環境が多様化し、「正常に育たない」、「正常に機能しない」状態になっているのではないかとも考えられています。お口がポカンと開いている、食事を噛まずに丸呑みしている、よだれが止まらないなどは、口腔機能の未発達による兆候の1つです。また、口腔機能の未発達は歯ならびに影響することも少なくありません。
2018年4月より、「口腔機能発達不全症」という病名のもと、口腔機能の発達不全を認める子どもたちとその家族に対し、歯科医療で支援ができるようになりました。お口の診査や問診によって原因や病態を明らかにし、口腔機能の異常を早期に発見することで、正常な口腔機能を育てることを目的としています。小児歯科では、お子さんのお口の成長発育に応じた口腔機能発達不全症の管理を行っていますので、担当医にお気軽にご相談ください。
乳歯がむし歯になってしまうと、痛いだけではなく、咬めないなど食生活にも影響を及ぼします。また、乳歯には永久歯が生えてくる場所を確保するという大切な役割があります。乳歯のむし歯を作らないように、ご家庭での歯磨きを工夫してみてください。
Q1:いつから磨けばいいのだろう?
生後8か月頃に下の前歯から乳歯が生え始めます。むし歯菌は、舌や歯ぐきなどの柔らかい部分にはくっつくことはできませんが、歯にはくっつくことができるので、この時期から歯の汚れを落とすことが大切です。
Q2:どんな歯ブラシを選べばいいのだろう?
お子さん用と保護者の仕上げ磨き用の2本を用意してください(図1)。前歯2本分くらいの毛先の幅の歯ブラシを選んでください。仕上げ磨き用は、持ち手が長いものが磨きやすいです。
Q3:どのように磨けばいいのだろう?
お子さんが自分で磨いてから、保護者のお膝の上で仕上げ磨きをしましょう(図2)。仕上げ磨きはペンを持つように持って優しく磨いてください。前歯はひだを避けながら、奥歯はほっぺたを軽くひっぱると磨きやすいです(図3)。できるだけ短時間で、眠くなる前に、声かけをしながら楽しい雰囲気で磨きましょう。
Q4:いつ磨けばいいのだろう?
「食べたら磨く」のが理想ですが、なかなかそういう訳にはいきません。寝ている間は、唾液の量が少なくなり、むし歯菌が増えやすいので、寝る前はしっかり歯磨きをしましょう。
Q5:歯磨き粉はいつから使えばよいのだろう?
ぶくぶくうがいができるようになれば、歯磨き粉をつけてもよいでしょう。たくさん付けると磨きにくくなるので、米粒大程度を歯ブラシの毛先につけて磨きましょう。