研究内容

口腔治療科の今までの研究成果とこれからの展望について

世界初の歯周組織再生剤リグロスの効果増強
我々の研究室が中心となり、FGF-2を有効成分とする世界初の歯周組織再生剤リグロスを開発しました。 リグロスの効果を最大限に発揮させるため、幹細胞や足場材(骨補填材)と併用することにより、さらに重度の歯周炎における歯周組織再生を目指します。
歯周組織における生物学的な老化機構の解明
”年をとるとなぜ歯は抜けるのだろう?”  加齢にともなう生体の老化は、様々な疾患の原因の一つです。そこで、高齢者の歯周病の病態をよく知るために、歯周組織の生物学的な老化機構の解明に取り組んでいます。歯根膜細胞の細胞老化が、自然炎症、ステムセルエイジングに及ぼす影響について分子生物学的な手法を用いて研究を行っています。
おなかの脂肪組織に存在する幹細胞を使った治療法の開発
おなかの皮下脂肪に存在する間葉系幹細胞(脂肪組織由来多系統前駆細胞)を単離、培養して、歯周組織欠損部に自己移植することにより、失われた歯周組織を再生させる治療方法の開発に取り組んでいます。
侵襲性歯周炎のヒト全ゲノム解読と遺伝子多型解析
歯周病は、細菌が原因となって歯を支える歯周組織が炎症により破壊される病気です。このうち、急速に歯周組織の破壊を認める侵襲性歯周炎は、通常の歯周病とは異なり家族内集積を認めることから、その発症には遺伝的な要因が関与すると言われています。しかし、どのような遺伝子がその病気の発症や進行に関わるのかについての全体像は未だ把握できていません。そこで、当研究室では、侵襲性歯周炎患者の全ゲノムを解読することにより、侵襲性歯周炎患者ゲノムのデータベース化、さらには遺伝子多型解析による侵襲性歯周炎の原因遺伝子の解明とそれら遺伝子の機能解析を目的として研究を進めています。
歯根膜中の間葉系幹細胞の同定
歯周組織は歯根膜中に含まれる間葉系幹細胞によって維持されていると考えられていますが、間葉系幹細胞の局在や機能は不明な点が多く残されています。そこで、マウス遺伝学や分子生物学の手法を用いて、同細胞の詳細を生体内で明らかにするための基礎研究を行っています。
新しいアプローチで歯周病の病態解明に挑む
歯周ポケット内バイオフィルム及び歯肉溝浸出液について遺伝子・タンパク・代謝物を網羅的かつ統合的に解析(トランスオミクス解析)することで、細菌叢内および宿主−細菌叢間の相互作用(歯周ポケット内dysbiosisと宿主組織環境を繋ぐ分子機構)の解明を分子レベルで目指す研究を行っています。
歯周組織における神経関連分子による炎症制御、骨代謝調節機能の解析
歯周組織は感覚神経や自律神経など様々な神経支配を受けており、神経ペプチドなどの神経関連分子が分泌されています。それらの神経関連分子が歯周組織における炎症の制御や硬組織代謝に及ぼす影響を解明するための基礎的研究を行っています。