メニューに戻る

基礎研究

基口腔癌におけるGATA遺伝子発現の意義、口腔癌リンパ節転移メカニズムの解明、新規分子標的治療の開発、3D組織培養モデルを用いた研究、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)、口腔癌における免疫細胞に関する研究などです。これらの研究については、以下で概略を説明します。

口腔癌におけるGATA遺伝子発現の意義


GATA遺伝子は様々な癌組織での発現が報告されており、GATA3は乳癌などでは診断におけるマーカーとしても用いられていますが、その発現意義については不明な点が多く残されています。当教室では口腔癌組織におけるGATA遺伝子の発現について分子生物学的に解析を行っています

口腔癌リンパ節転移に関する研究


当教室と大阪大学歯学部生化学教室で研究に使用されている、マウスの口腔癌頸部リンパ節転移動物実験モデルです。緑色に蛍光発色させた癌細胞をマウスの舌に接種することで緑色に光る頸部リンパ節(転移リンパ節)を容易に検出することができます。

また、リンパ節に転移した癌細胞を回収し、さらに舌に接種することによって、よりリンパ節転移を起こしやすい細胞を樹立することができました。この細胞を解析することにより、口腔癌の転移メカニズムを調べることができると考えています。

口腔癌における新規分子標的治療の開発


癌治療において新規分子標的治療薬の開発は日々行われていますが、当教室でもいくつかの新規標的遺伝子について研究を行っています。その中でもE-selectinを標的とした抗体医薬の臨床応用を目指した研究をアメリカの研究室との共同研究で行っています。

3D組織培養モデルを用いた研究


口腔癌に限らず、悪性腫瘍に関する研究は癌細胞周囲の環境も重要であることが知られています。当教室では他研究室との共同研究で、特殊な方法を用いて細胞を3次元的に培養することによりin vitroで上皮や血管などの組織構造を再現し、口腔癌研究に応用しています。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT: boron neutron capture therapy)の基礎研究


あらかじめホウ素10を腫瘍に取り込ませ、これに中性子線を照射して極めて短い飛程距離の放射線を発生させて、周囲の癌細胞を選択的に破壊する治療法です。この中性子線を発生させるために以前は原子炉を使用していましたが、現在は中性子線の発生させる加速器の開発が進んでいます。当教室では他施設と共同でこの次世代のBNCTに関する研究を行っています。

口腔癌における免疫細胞に関する研究


近年、癌治療において腫瘍内の免疫細胞の様々な役割が解明されています。当教室では大阪大学医学研究科との共同研究で、口腔がんセンターで手術した組織の一部を検体として腫瘍組織内の免疫細胞についてフローサイトメトリーを用いた解析を行っています。

顎口腔腫瘍および前癌病変の病態進行における分子メカニズムの解明に関する研究

1.研究の対象

平成20年3月から平成31年2月までに大阪大学歯学部附属病院で口腔がんの手術を受けられた方

2.研究目的・方法

【目的】 口腔がんは治療後の機能障害が問題となり、治療法や切除範囲を制限されやすく、再発やリンパ節・他臓器への転移などによって、その治療成績はこの数十年改善されていないのが現状です。近年、手術などにより得られた病理組織標本からDNAやRNAなどを抽出することができるようになっています。そのため、過去の標本から解析することが可能で、診断や治療を行う上での新たな根拠が明らかになることが望まれます。本研究では、この解析結果を利用して口腔がんの臨床病態解明を行い、世界に貢献する基礎的なデータを提供することを目的とします。

【方法】 カルテ情報から術前・術後の経過、手術内容、予後に関する内容と、病理組織標本を使用して特定の遺伝子やタンパクなどの量などを解析させていただきます。研究のために検査を追加するなど、患者さんの負担となるようなことは一切行いません。

3.研究に用いる試料・情報の種類

情報:病歴、抗がん剤治療の治療歴、副作用等の発生状況、カルテ番号 等

試料:手術等で摘出・切除した組織標本

4.お問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出下さい。

また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先

大阪大学歯学部附属病院 口腔外科学第二教室 相談窓口:森田祥弘

住所:大阪府吹田市山田丘1−8(連絡先:06-6879-2941)

研究責任者:大阪大学歯学部附属病院 口腔外科学第二教室 鵜澤成一

悪性腫瘍および炎症性疾患病変組織内における制御性T細胞の免疫反応への影響の解析に関する研究

1.研究の対象

2017年6月から2019年3月までに大阪大学歯学部附属病院で口腔がんの手術を受けられた方

2.研究目的・方法

【目的】がんに対する免疫応答の研究によって、がん抗原(がん細胞特異性に発現されている抗原)の発見・同定と、それに対して特異的に反応するTリンパ球をはじめとする種々の免疫反応因子の存在が明らかにされています。一方で制御性T細胞は本来過剰な免疫反応を抑制し、適正な免疫状態を維持する目的で存在していますが、近年では血液や腫瘍組織中において制御性T細胞が免疫反応を抑制し、結果的に腫瘍の増殖を助けると言われています。しかし口腔がんにおいてもその機能的・直接的解析は十分に行われていません。本研究では、手術などにより得られた病理組織標本から制御性T細胞をはじめとした免疫反応因子を解析し、口腔がんの臨床病態解明を目的とします。

【方法】 カルテ情報から術前・術後の経過、手術内容、予後に関する内容と、病理組織標本を使用して制御性T細胞を中心とした免疫反応因子や関連する遺伝子、タンパクなどの量などを解析させていただきます。研究のために検査を追加するなど、患者さんの負担となるようなことは一切行いません。

3.研究に用いる試料・情報の種類

情報:病歴、抗がん剤治療の治療歴、副作用などの発生状況、カルテ番号 など

試料:手術などで摘出・切除した組織標本

外部への試料・情報の提供

提供:データの提供は、特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います。対応表は、当科の研究担当者が保管・管理します。

研究組織

臨床腫瘍免疫学講座        和田 尚

免疫学フロンティア研究センター  坂口 志文

薬学研究科            辻川 和丈

東京医科大学           佐藤 永一

東京大学             垣見 和宏

理研横浜研究所          本田 賢也

麻布大学             森田 英利

塩野義製薬            柳楽 盛男

4.お問い合わせ先

本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。 ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。

また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先

大阪大学歯学部附属病院 口腔外科学第二教室 相談窓口:森田祥弘

住所:大阪府吹田市山田丘1−8(連絡先:06-6879-2941)

研究責任者:大阪大学歯学部附属病院 口腔外科学第二教室 鵜澤成一

研究代表者:大阪大学医学部附属病院 消化器外科教室 土岐祐一郎

悪性腫瘍および炎症性疾患病変組織内における制御性T細胞の免疫反応への影響の解析に関する研究大阪大学歯学部

参考文献

  • Morita Y, Hata K, Nakanishi M, Omata T, Morita N, Yura Y, Nishimura R, Yoneda T: Cellular fibronectin 1 promotes VEGF-C expression, lymphangiogenesis and lymph node metastasis associated with human oral squamous cell carcinoma. Clin Exp Metastasis 32.7: 739-753, 2015.
  • Morita Y, Leslie M, Kameyama H, Lokesh G L, Ichimura N, Davis R, et al.: (2020). Functional Blockade of E-Selectin in Tumor-Associated Vessels Enhances Anti-Tumor Effect of Doxorubicin in Breast Cancer. Cancers 12.3: 725, 2020.
  • Kyoko N, Takami A, Soichi I, Mitsuru A:Construction of Vascularized Oral Mucosa Equivalents Using a Layer-by-layer Cell Coating Technology, Tissue Eng. Part C Methods, 25, 262-275, 2019.
  • Yamatomo N, Iwagami T, Kato I, Masunaga S, Sakurai Y, Iwai S, Nakazawa M, Ono K and Yura Y: Sonoporation as an enhancing method for born neutron capture therapy for squamous cell carcinomas. Radiat Oncol 8: 280, 2013.
  • Suzuki M, Kato I, Aihara T, Hiratsuka J, Yoshimura K, Niimi M, Kimura Y, Ariyoshi Y, Haginomori S, Sakurai Y, Kinashi Y, Masunaga S, Fukushima M, Ono K, Maruhashi A: Boron neutron capture therapy outcomes for advanced or recurrent head and neck cancer. J Radiat Res 55:146-153, 2014.
  • Fujita Y, Yamamoto N, Kato I, Iwai S, Ono K, Sakurai Y, Ohnishi K, Ohnishi T, Yura Y: Induction of multinucleation in oral squamous cell carcinoma tissue with mutated p53 surviving boron neutron capture therapy. Int J Radiat Biol 87:293-301, 2011.

過去の業績

  • Takeshita A, Iwai S, Morita Y, Niki A, Hamada M, Yura Y: Wnt5b promotes the cell motility essential for metastasis of oral squamous cell carcinoma through active Cdc42 and RhoA. Int J Oncol 44: 59-68, 2014.
  • Takahashi G, Meshii N, Hamada M, Iwai S, Yura Y: Sequence of a fusogenic herpes simplex virus, RH2, for oncolytic virotherapy. J Gen Virol 94: 726-737, 2013. (featured online on Global Medical Discovery [ISSN 1929-8536],p28, (http://globalmedicaldiscovery.com ))
  • Meshii N, Takahashi G, Okunaga S, Hamada M, Iwai S, Takasu A, Ogawa Y, Yura Y: Enhancement of systemic tumor immunity for squamous cell carcinoma cells by an oncolytic herpes simplex virus. Cancer Gene Ther 20:493-498, 2013. (featured online on World Biomedical Frontiers (http://biomedfrontiers.org/cancer-2014-2-24/ ))
  • Mizuta N, Hattori K, Suzawa Y, Iwai S, Matsumoto T, Tadokoro M, Nakano T, Akashi M, Ohgushi H, Yura Y: Mesenchymal stromal cells improve the osteogenic capabilities of mineralized agarose gels in a rat full-thickness cranial defect model. J Tissue Eng Regen Med 7:51-60, 2013. 
  • Takaoka H, Takahashi G, Ogawa F, Imai T, Iwai S, Yura Y: A novel fusogenic herpes simplex virus for oncolytic virotherapy of squamous cell carcinoma. Virology J 8:294, 2011. 
  • Shintani M, Takahashi G, Hamada M, Okunaga S, Iwai S, Yura Y: Effect of ultrasound on herpes simplex virus infection in cell culture. Virology J 8:446, 2011. 
  • Hamada M, Miki T, Iwai S, Shimizu H, Yura Y: Involvement of RhoA and RalB in geranylgeranyltransferase I inhibitor-mediated inhibition of proliferation and migration of human oral squamous cell carcinoma cells. Cancer Chemother Pharmacol 68:559-69, 2011.
  • Iwai S, Yonekawa A, Harada C, Hamada M, Katagiri W, Nakazawa M, Yura Y:Involvement of the Wnt-β-catenin pathway in invasion and migration of oral squamous carcinoma cells. Int J Oncol 37:1095-1103, 2010.
  • Suzawa Y, Funaki T, Watanabe J, Iwai S, Yura Y, Nakano T, Umakoshi Y, Akashi M: Regenerative behavior of biomineral/agarose composite gels as bone grafting materials in rat cranial defects. J Biomed Mater Res Part A (J Biomed Mater Res A) 93:965-975, 2010.