石灰化異常疾患に関する研究

歯や骨などの生体硬組織は、細胞外マトリックスにリン酸カルシウムが沈着した石灰化組織です。この石灰化過程に異常があると歯や骨の形成不全や骨軟化症等の様々な病気が発生します。
私たちの教室では、伝統的に硬組織の石灰化障害に関する研究が行われており、これらの手法に分子生物学的手法等を加えた多角的アプローチにより、石灰化に関連する様々な生命現象を研究しています。また、細胞外マトリックスであるDMP1が骨内に分布する骨細胞に特異的に発現することを発見し、DMP1機能の解明や疾患診断・再生医療への応用を研究しています。

 
唾液腺腫瘍の発生と進展に関する研究

 唾液腺の腫瘍は頻度が低く種類が多彩であるために、研究は十分に行われていません。有効な治療法は手術のみで、再発や転移を起こした腫瘍の完治は殆ど望めません。

私達は口腔外科学教室の協力を得て、腫瘍細胞や細胞の動物への移植によって形成される腫瘍の研究を行い、唾液腺腫瘍の発生と進展のメカニズムを分子生物学的に明らかにしようとしています。得られた成果が新世代の分子標的剤の選択に利用されたり従来の化学療法や放射線療法の効果を高める手段に利用されたりして、患者さんの生存率が改善することを願っています。

 
Fibrous dysplasiaの臨床病態に関する研究

 Fibrous dysplasia(FD)は、未熟骨を伴った線維性組織が正常の骨を置換していく骨の病気で、全身骨格に発生して骨格変形、骨折等の症状を引き起こします。その好発部位は顎骨であるため、歯科にも多くの患者さんが来院されます。近年、本症の病因遺伝子(GNAS遺伝子)が同定され、発症・病態の分子メカニズムが明らかになりつつあります。
私たちの研究室では、歯科放射線学教室や口腔外科学教室の協力を得て、FDの病態機構を解明するため、多角的なアプローチで研究を進めています。これらの研究成果により、FDの病態メカニズムに基づいた新規診断法や内科的治療法を開発して、少しでも患者さんの治療に貢献できることを願っています。

 
口腔癌に関する臨床病理学的研究

 我が国の口腔癌による死亡者数は30年前と比較して2倍以上に増加しています。この傾向は若年層を含めどの年齢層においてもみられ、癌の早期発見の進歩が求められています。多くの口腔癌は、白板症や紅板症などの前癌病変を経て発生するとされていますが、これらの段階では自覚症状に乏しく、口腔癌検診や口腔細胞診の普及率も低いため病変が発見されにくいのが現状です。
私たちの研究室では、口腔細胞診の検査を推奨するとともに、組織・細胞検査時に得られた検体を多角的に病態解析し、組織・細胞診断データベースを構築して病理診断に応用することにより、口腔癌の早期発見に貢献できることを願っています。