研究活動
口腔細菌性バイオフィルム形成と菌体間相互作用の解明
1)口腔細菌性バイオフィルム形成と菌体間相互作用の解明
歯周病の発症・進行には、歯周病細菌を含むデンタルバイオフィルムが深くかかわっている。デンタルバイオフィルム中では多数の細菌種が高密度で棲息しており、菌体間相互作用がその成熟過程において重要な役割を果たしている。そこで、我々は、主要な歯周病細菌であるPorphyromonas gingivalisがデンタルバイオフィルムを形成するメカニズムについて、早期定着菌との相互作用に焦点を当て、分子生物学的手法を用いて研究を行ってきた。
○これまでの研究でわかったこと
・P. gingivalisは種々の口腔細菌と共凝集を起こし、その共凝集は唾液や歯肉溝浸出液により阻害される。
・口腔レンサ球菌の菌体表層に存在するglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)はP. gingivalisの線毛に特異的に結合し、その結合領域はStreptococcus oralis ATCC 9811株GAPDHのアミノ酸残基166-183に相当する領域に存在する。このアミノ酸配列を基に作製したペプチドは、種々の口腔細菌と異なる線毛型を有するP. gingivalisとのバイオフィルム形成を抑制する。
・P. gingivalisのltpI遺伝子が口腔レンサ球菌へのバイオフィルム形成に情報伝達因子として関与している。
○現在行っている研究
・バイオフィルム形成における歯周病細菌表層タンパク質の解析
経時的なバイオフィルムの形成においてGAPDH-線毛以外の新たな相互作用因子がいくつか存在し、バイオフィルム形成を調整することを見出した。現在、これらの作用因子を解析している。
・歯周病細菌の増殖や病原因子に影響を及ぼす口腔常在菌の探索と原因成分の解明などP. gingivalisバイオフィルム形成を阻害する阻害剤の開発を目指して研究を続けている。