研究内容

オートファジーをはじめとする細胞内代謝の感知機構の解明

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我々ヒトを始めとする従属栄養生物は、外部から栄養分をとりいれ、それをエネルギーや自らの構成成分の部品として利用することで生きています。また 栄養供給が途絶えたときには、細胞の中でオートファジーという自らの一部分を分解する現象がはじまり、そのことにより、その危機的な状況を乗り越えて います。このように、細胞は栄養供給の有無を敏感に感知する仕組みが備わっているものと考えられますが、実際はその具体的な仕組みについては不明な部 分が多く、生命科学に残された課題となっております。私たちはこれまで、オートファジーの制御機構の解明に取り組んできました。それらの成果を基盤と して、この難題の解明を目指してまいります。

細胞内物質輸送の制御機構の解明

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真核細胞の内部はオルガネラと呼ばれる小空間で区画化されており、それらの間で物質が行き来しています。例えばオートファジーの場合、細胞質基質が リソソーム/液胞へと送り込まれることで分解されます。このことは第一の項目に関連しますが、それぞれの物質輸送の行き先などは栄養供給の有無などの 環境変動に従って大きく変動をします。しかしながら、それがどの様な仕組みによるものなのかは、謎が多く残されております。私たちはこれまで、オート ファジーによる物質輸送制御機構の解明に取り組んできました。それらの成果を基盤として、この詳細な分子機構の解明を目指してまいります。

細胞生物学を基盤とした新しい口腔科学の創出

歯学研究科をはじめ内外の臨床及び基礎の各教室と連携することにより浮かび上がる口腔科学における諸問題を、私達が強みとする細胞生物学的観点から 見直すことにより、新しい口腔科学の創出を目指しております。

口腔レンサ球菌の病原性

口腔内には数多くの細菌が定着しています。最も多いのはレンサ球菌の仲間で、例えばミュータンスレンサ球菌が虫歯を引き起こすことは広く知られてい ます。これまでミュータンスレンサ球菌以外のレンサ球菌は無害な常在細菌であるとみなされ、研究もあまり行われていませんでした。口腔レンサ球菌の中 で、ミティス群に属する一群のレンサ球菌は肺炎や髄膜炎を引き起こす肺炎球菌の仲間であることが20年ほど前に示されていたのですが、改めて調べてみ ると共通の病原因子をいくつも持っていることが分かってきました。抜歯などの際に血液中に入ったミティス群レンサ球菌は心内膜炎を引き起こすことが知 られており、それに加えて最近は誤嚥性肺炎や血管梗塞の原因になることが指摘されています。現在、これらの口腔レンサ球菌の病原性を病原レンサ球菌の それと対比させながら解析し、臨床医学の分野でも役立てることができるような研究を進めていきたいと考えています。