大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科は,咬合(噛み合わせ)と咀嚼機能(食べ物を咬んでこなれさせること),嚥下機能(液体やこなれた食べ物を飲み込むこと),構音機能(舌や歯ぐきによって言葉を作ること)さらには口元や顔貌の回復を中心に,各種補綴装置(クラウン=冠,ブリッジ,義歯,顎義歯,インプラントなど)による口腔機能のリハビリテーションとその維持管理を行っています.また,他科(歯科および医科)との連携にも積極的に取り組み,患者さんの口腔と全身の健康を総合的に高め,維持することを目標とした治療を行っています.
なお,当科は,公益社団法人日本補綴歯科学会認定研修施設,一般社団法人日本老年歯科医学会認定研修歯科診療施設,日本スポーツ歯科医学会認定研修施設に指定されています.
科長 | 池邉 一典 | 外来医長 | 権田 知也 | 病棟医長 |
担当歯科医師 |
明間 すずな | 阿部裕里乃 | 池邉 一典 | 石井 英美里 | 石田知沙都 |
伊堂寺 慧 | 岡田 佳恵 | 岡本 理沙 | 吉備 皓太郎 | 木村 綾花 |
倉木 萌 | 高阪 貴之 | 権田 知也 | 清水 夏輝 | 武内 聡子 |
竹下 佳甫 | 辻岡 義祟 | 鶴嵜 有咲 | 西村 尚弘 | 萩野 弘将 |
長谷川大輔 | 濱田 匠 | 葉山 舞子 | 東 孝太郎 | 平野 珠希 |
平松 里彩 | 伏田 朱里 | 豆野 智昭 | 武藤 祐太朗 | 村上 大祐 |
室谷 有紀 | 湯本 華帆 | 和田 智里 | 和田 誠大 | |
専門医,認定医等の資格取得状況 (※:指導医の資格を有する) |
公益社団法人日本補綴歯科学会専門医 | |||
池邉 一典 ※ | 権田 知也 ※ | 和田 誠大 ※ | |
高阪 貴之 | 豆野 智昭 | 濱田 匠 | |
一般社団法人日本老年歯科医学会認定医・専門医 | |||
池邉 一典 ※ | 高阪 貴之 | ||
一般社団法人日本顎顔面補綴学会認定医 | |||
高阪 貴之 | |||
公益社団法人日本口腔インプラント学会専門医 | |||
権田 知也 | 和田 誠大 ※ | ||
日本スポーツ歯科医学会認定医 | |||
権田 知也 |
<治療の流れについて>
入れ歯の治療は以下の順番で進めています.一般的に初診から入れ歯の完成までに最低でも5~6回来院していただく必要があります(場合によっては治療の順番が変わったり,回数が増えることがあります).1.全部床義歯(総入れ歯)
1.金属床義歯
金属床義歯は,入れ歯の内側の部分を金属にしたものです.全てが樹脂で作られた保険適用の入れ歯と比較して,薄くて丈夫,違和感が少ない,食べ物の温度が分かりやすいなどのメリットがあります.
2.アタッチメント義歯
アタッチメント義歯は,保険の入れ歯のように金属製のバネではなく,アタッチメントと呼ばれる維持装置を用いて,入れ歯を支えます.アタッチメントの種類には磁石や,ゴム製のものがあります.これにより,見た目がよく,動きの少ない入れ歯を作ることができます.(アタッチメントを装着するためには,口の中にご自身の歯やインプラントがあることが前提となります.)
3.ノンメタルクラスプ義歯
ノンメタルクラスプ義歯は,保険の入れ歯の金属製のバネのかわりに特殊な樹脂を使用したものです.前歯など金属が目立つ部位のバネを樹脂にすることにより,見た目を改善することができます.
4.BPS ®義歯
BPS(Biofunctional Prosthetic System)®とは,Ivoclar vivadent社とヨーロッパの歯科大学,臨床医が共同で開発した高品質な入れ歯を製作するためのトータルシステムです.日本の大学病院では当科が初めて正式に採用しました.
専用に開発された材料,器具を使い,特別に工夫された方法で,ライセンスを持った専門の歯科医師が診療を行い,専門の歯科技工士が義歯を製作します.そのため,精度の高い入れ歯の製作が可能となり,人工の歯や歯肉の樹脂に高品質な材料を用いることで長期間変化しにくく,しっかりと咬める入れ歯が製作できます.
高齢者歯科外来では,義歯による口の機能回復を中心に,歯や口,全身の健康状態を正しく評価し,各個人の病態に応じた適切な治療を行っています.
また,年を取ると,お口の機能に問題が生じやすくなります.咀嚼補綴科では治療と同時に,お口の機能評価(口腔機能低下症の診断)も行っており,歯ブラシや義歯の清掃などの口腔ケアだけではなく,口腔機能の維持・回復のためのアドバイスもさせて頂きます.
<口腔機能低下症とは?>
歯磨きがおろそかになったり,義歯の不調があっても歯科医院に行かなかったりすると,虫歯や歯周病によって歯が減り,お口の機能が低下してしまいます.
そうなると食べる力が低下して,低栄養など全身の健康に悪影響を及ぼします.
咀嚼補綴科では,日本老年歯科医学会の専門医・認定医が中心となって,これらの問題がある高齢者に,専門的な
顎顔面補綴外来では,口腔にできる腫瘍(良性腫瘍,悪性腫瘍)によって顎や舌が切除された患者さんが,もう一度食べる機能やしゃべる機能を取り戻し,より早く社会復帰していただけるように,特殊な補綴装置(顎義歯,舌接触補助床,エピテーゼなど)を用いて,咀嚼(かむ),嚥下(のみこむ),構音(しゃべる)機能の総合的なリハビリテーションを行っています.
また,これらの装置は,交通事故などによる外傷や,先天的に口や顎に欠損のある方,また脳卒中や神経疾患により「のみこむ機能,しゃべる機能」に障害がある方にも有効な場合があります.
<顎義歯>
写真は,腫瘍切除により生じた左上の顎の欠損に対して,顎義歯で対応した一例です.
顎が欠損して鼻の穴に通じてしまうと,食べた物や言葉が欠損部に漏れてしまい,正常な口腔機能を営むことができません.
このようなケースでは,欠損部を埋めるように,栓塞部(オブチュレータ)を付けた特殊な義歯(顎義歯)を製作します.
腫瘍切除により生じた舌の欠損に対して,舌接触補助床で対応した一例です.
嚥下(のみこむ)や構音(しゃべる)を行うには,舌が上顎に接触して圧力を発揮する必要があります.舌を切除した患者さんは,その圧力を上手に発揮させることができません.
このようなケースでは,舌の機能を補助することを目的として,上顎の部分を盛り上げた形態の装置(舌接触補助床)を製作します.
<エピテーゼ>
欠損が顔面にまで及んでしまった場合,欠損部の封鎖と外観の回復を目的として,人工皮膚(エピテーゼ)を製作します.特殊なシリコンで形を作り,周囲組織に調和するように着色して自然な外観を再現します.
インプラント治療は,歯を失った(欠損)部位の顎骨にチタンあるいはチタン合金製の人工歯根を埋め込むことで,義歯(入れ歯)やブリッジのような欠損に隣接する歯に頼ることなく,咀嚼機能を回復する方法で,近年,良好な治療効果が認められています.したがってインプラント外来では,近未来歯科医療センターならびに口腔インプラントセンターと連携し,安心で安全なインプラント治療に取り組んでいます.
また固定性(取り外さない)のインプラント治療にのみならず,当科義歯外来と連携し,義歯治療とインプラント治療のコンビネーション(インプラントオーバーデンチャー)も積極的に取り組み,患者さんの希望やライフステージに合わせた最適な治療方法を提案しています.
<上顎前歯部の義歯の違和感に対してインプラント治療で対応した症例>
欠損している部位に,CT撮影等,慎重な診断を行った後,インプラントを2本設置し,固定性の歯を製作しました.
<下顎の義歯の痛みと浮き上がりに対してインプラントオーバーデンチャーで対応した症例
インプラントを2本設置し,アタッチメントという特殊な装置を連結することで,義歯の浮き上がりを解消するとともに,義歯自体の安定が向上することで痛みが消失しました.
スポーツ歯科外来では,スポーツ選手が安心して実力を発揮できるように,ケガを予防するための装置であるマウスガードの提供と,健康な噛み合せを維持できるようにサポートしています.
「良い噛み合せ」は,食生活において非常に大切であることはいうまでもありませんが,実はスポーツにおいてもパフォーマンスを発揮するために重要です.
マウスガードは,歯の表面にかぶせて,外からの力で歯が欠けたり,折れたり,歯肉を傷つけることがないように守ってくれる柔らかい素材でできた装置です.当科では専門の知識を持った歯科医師と歯科技工士が製作しています.