教育
学生教育
1) 講義概要
歯科麻酔学には従来の全身麻酔学、局所麻酔学のみならず、精神鎮静法、全身疾患を有する患者の歯科治療時の全身管理学、ペインクリニック、救急蘇生法など多岐にわたります。
全身麻酔学の理解のためには生理学、薬理学、解剖学等の基礎科目の知識が不可欠です。
この観点から歯科麻酔学の最初には呼吸、循環、代謝、酸塩基平衡等を中心とした生理学を、とりわけ臨床との兼ね合いを意識しながら講義します。
循環に関しては生理学的知識の他に、臨床心臓病学との関連から心電図に関する基礎知識を理解し、心電図の診断演習を行います。
患者の術前管理では、全身状態評価を通じて、麻酔前投薬と経口摂取制限の意義や麻酔管理上問題となる疾患とその対策について理解を深めます。
また、全身麻酔薬については、吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、麻薬性鎮痛薬、筋弛緩薬等について臨床薬理学的知識の習得を目標としています。
全身麻酔法では、麻酔器と麻酔回路、麻酔に使用する器具等に精通します。
周術期(術前・術中・術後)の麻酔管理については、麻酔導入法、麻酔合併症等を歯科麻酔の特殊性とともに理解します。
局所麻酔法に関しては、局所麻酔薬および血管収縮薬の薬理学的知識を得た後,歯科臨床における局所麻酔法の技術を習得します。
特に三叉神経の走行についての解剖学的知識に基づいて伝達麻酔法の手技を理解します。
局所麻酔の全身的合併症についても原因、対策、治療法を含めて理解します。
また、歯科領域のペインクリニックへの応用も学びます。
歯科治療時の不安、緊張、恐怖等の精神的ストレスを減じるための方法として精神鎮静法があります。
特に、局所麻酔時の全身的合併症の予防法として、また内科的基礎疾患を有する患者の全身管理法のひとつとしての鎮静法の意義を理解します。
近年、高齢化時代の到来と医学の進歩により従来歯科治療を受けられなかったような全身的問題点を有する患者が歯科を受診する機会が増えています。
これらの患者の安全な全身管理法について理解を深めることがこれからの歯科医師にとっては重要となってきました。
全身麻酔法で学んだ呼吸循環生理学の基礎知識の上に立って、患者評価の方法、患者のバイタルサインの見方、心電図を含むモニターの見方、鎮静法の応用法、局所麻酔薬の選択法等について理解を深めます。
さらに、歯科治療時の緊急事態の発生に備えて救急蘇生法を習得します。
また、ペインクリニックや鍼麻酔などで用いられている、東洋医学的なアプローチについても理解してもらいます。
2) 学習目標
- 全身麻酔を理解する上で基本ともいえる呼吸、循環、代謝、酸塩基平衡等の生理学的知識を習得する。
- 心電図の基礎知識を得、臨床診断ができるようにする。
- 麻酔前投薬、吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、筋弛緩薬の薬理学的知識を習得する。
- 患者の術前評価と術前管理、全身麻酔の導入法および麻酔中の患者管理および麻酔後の患者管理について、特に歯科麻酔の特殊性とともに理解する。
- 局所麻酔法に関して基礎的知識を得、臨床的技術を習得する。
- 精神鎮静法について理解する。
- 全身的問題点を有する歯科患者の全身管理法について理解を深める。
- 歯科領域のペインクリニックについて理解する。
- 救急蘇生法について一次救命処置を習得する。
- 東洋医学療法(鍼灸・漢方)について理解する。
3) 評価方法
- 5年次臨床科目試験としての歯科麻酔学について筆記試験を行い、合否を判定する。
- 6年次の臨床実習中に全身麻酔症例、全身的問題点を有する歯科患者の全身管理症例、ペインクリニック症例の3ケースを配当する。各症例のレポートを提出し、指導教官が試問を行い、理解度を評価する。
- 6年次末に卒業試験として歯科麻酔学全般の評価を行い、合否を判定する。
卒後研修
卒後研修の内容
研修医 :1年間、 総合診療部および歯科麻酔科もしくは協力型施設にて研修する
大学院生:4年間で研究活動、麻酔研修に従事する。
研究生 :年限自由,週1~4日,麻酔研修,研究などを希望に応じて行う.
歯科麻酔科入局者は、大学病院や麻酔研修病院、全身麻酔症例および有病者高齢者のリスク患者管理症例を通じて3~4年研鑚を積み、その一里塚として日本歯科麻酔学会認定医を取得します。
この間、勉強会などで循環器、呼吸器を中心に全身管理法の礎を学びます。認定医取得後、歯科麻酔に専従することで、日本歯科麻酔学会専門医も取得可能です。
全身麻酔研修病院としては 大阪厚生年金病院、滋賀県立成人病センター、大阪府立成人病センター、大阪府立母子保健総合医療センターなどがあり日本麻酔科学会指導医・専門医のもと、医科の様々な手術麻酔が研修できます。これらは歯科麻酔科医にとっては大変貴重な体験です。