大阪大学大学院歯学研究科口腔科学専攻高次脳口腔機能学講座(歯科麻酔学教室)

大阪大学歯学部・大学院歯学研究科 大阪大学

歯科麻酔科における臨床

大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科では、麻酔管理として全身麻酔、鎮静法、MAC(Monitered Anesthesia Care)、口腔顔面領域のペインクリニックを行っている。また院内で発生した救急処置を担っている。

1)全身麻酔

 口腔外科の手術や障害者の歯科治療などの全身麻酔を担当している。当科での症例の特徴は、口唇口蓋裂に対する小児麻酔件数が多いことである。口腔癌手術では再建も含めて10時間を越える麻酔管理を要することもしばしばである。
 歯科治療および小手術の全身麻酔では、日帰り(半日入院)や1泊入院、2泊入院も行っている。また静脈麻酔で対応できないような、嘔吐反射の強い患者や歯科治療に対する不安・恐怖などが強い患者の全身麻酔も行っている。

2)鎮静法(静脈内鎮静法・吸入鎮静法)

 歯科治療に対する不安、恐怖、不快感、嘔吐反射などを減らし、できるだけ安全で快適に歯科治療を受けていただくための方法として"鎮静法"がある。鎮静法では低濃度の笑気ガスの吸入や、鎮静剤の静脈内投与により実施する。
 歯科治療のための鎮静法は、患者の意識は保ちながら、治療に対する不安感、緊張感を和らげ、楽な気分で治療を受けていただくための方法である。インプラント手術にも静脈内鎮静法を応用し、ストレスのない治療を実施している。

鎮静法の効果は

  1. 歯科治療に対する不安、恐怖感が軽減する。
  2. 治療中の痛みや不安感の記憶が少なくなる。
  3. 治療時間の経過が気にならなくなる。
  4. 嘔吐反射を抑えることができる。
  5. ストレスを軽減することで、安全な歯科治療の手助けとなる。

歯科治療の為の静脈内鎮静法ガイドライン
http://kokuhoken.net/jdsa/data/file/guideline_intravenous_sedation.pdf

3)リスク患者の管理(MAC : Monitored Anesthesia Care)

 全身疾患を有する患者の歯科治療の際には、緊張や痛みなどが引き金となって、全身疾患が悪化したり、合併症を引き起こすことがある。歯科麻酔科では、各科主治医からの依頼を受け、全身疾患を有する患者の歯科治療の際に、血圧、脈拍、心電図、酸素飽和度などをチェックし、合併症の予防に努めている。万一、合併症が生じてもすぐに対処できるようにしている。また近年、局所麻酔薬に過敏に反応する患者が増加している。そのような方に対しては、安全に局所麻酔を用いた治療を行っていただけるよう、事前に局所麻酔のアレルギー検査(自費)も行っている。

4)疼痛治療(ペインクリニック)

 口腔顔面領域の痛みや麻痺(三叉神経痛、顎関節症、帯状疱疹、顔面神経麻痺、癌性疼痛、抜歯後痛、抜髄後痛、抜歯後神経麻痺、舌痛症、原因不明の痛みや違和感など)に対して、治療を行っている。患者さんの状態や希望にあわせて、疼痛部位の神経ブロックや近赤外線レーザーの照射、内服・外用・点滴などの各種薬物療法、そして鍼・灸・吸角・漢方などの東洋医学的な治療を行っている。
 痛みや麻痺、知覚異常などに対し、頻度の高い治療法としては星状神経節ブロックがある。これは、首にある交感神経節に局所麻酔を行い、交感神経をブロックすることで顔面の血行を一時的に促進させ、症状の回復をはかる治療法である。

5)東洋医学療法

 疼痛・麻痺の東洋医学的な治療法として、鍼・灸・吸角・漢方を使用している。
また、疼痛疾患以外の口腔顔面疾患の東洋医学的な治療も行っている。

東洋医学療法の適応 : 難治性歯周炎、口臭、口腔乾燥症、口内炎、口腔内違和感、顎関節症、麻痺、知覚異常など

6)院内救急時の対処とその啓発活動

 歯科治療中の気分不良や、持病の悪化など、院内の各診療科で歯科治療中に発生した救急事態に対して歯科麻酔医が駆けつけ、救急処置を行っている。また、院内救命救急処置の講習会を定期的に開催することで、病院職員の救急対応能力の向上を図っている

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