医療関係者の皆様へ To all medical staff
多様化する口腔機能障害に対するリハビリテーションRehabilitation for various oral function disorders
いつも患者さんのご紹介ありがとうございます。顎口腔機能治療部(以下、顎治)の診療内容は時代の流れにあわせて変化してきました。先生方がご存知の頃の顎治はどんな患者さんを診察していたでしょうか?歴史をさかのぼると、顎治は口蓋裂の言語治療から始まりました。うまくしゃべれない、食べられない、飲み込めない、息が吹けない、口が渇く、いびきをかく、寝ているときに息が止まる、これらはすべて口の機能障害です。言語治療のノウハウを活かし、文字通り「顎口腔の機能を治療する部門」として上記のような口の機能が障害されて困っておられる方の治療やリハビリを担当しています。 主な治療内容は以下の通りです。 The main treatment contents are as follows.
言語障害に対する治療Treatment for speech disorder
摂食嚥下障害に対する治療Treatment for dysphagia
睡眠時無呼吸症候群に対する治療Treatment for sleep apnea syndrome
口腔乾燥症に対する治療Treatment for dry mouth
栄養障害に対する治療Treatment for malnutrition
当部で開始した摂食嚥下機能検査オープンシステムについてご紹介します。 介護保険の改定により、歯科にもミールラウンドへの参加を依頼されるようになってきました。その影響もあり、地域歯科クリニックでの摂食嚥下障害への対応が、これまで以上に求められていることを感じている先生もおられることと思います。摂食嚥下リハビリテーションを依頼されたものの、「誤嚥させてしまったらどうしよう」、「どのような食べ物を使ってリハビリしたらよいか分からない」といった疑問が生じ、解決方法がわからないまま不安を抱きつつリハビリをしている、よく分からないからスタッフに任せている・・・そんな心当たりのある先生はおられませんか?実際、摂食嚥下機能の精査には嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査が必要であり、設備面からクリニックでの対応が難しいことがあります。「困ったなぁ・・・」という先生方に朗報となれば幸いです!すでにご存知の先生もおられるかもしれませんが、当部では、そういったクリニックの先生方の後方支援として、摂食嚥下機能検査オープンシステムをはじめました!
摂食嚥下機能検査オープンシステムとは?
オープンシステムとは、地域の診療所やクリニックで初期診療を行い、専門的な設備が必要な検査や診療については、高度な設備を有する病院を開放して行うシステムのことを言います。先生方が診察されている患者さんを当部にご紹介頂き、一度の受診で嚥下機能検査(嚥下内視鏡検査)、治療方針のプランニング、主治医への報告書作成、等を行います。オープンシステムですので、クリニックの先生方、スタッフの方も希望があれば一緒に検査・診療場面に立ち会って頂けます。 摂食嚥下機能の精査を行い、誤嚥の有無や適切な食事形態などを知った上で安全にリハビリを行いましょう!
ご紹介頂いた患者さんの検査・診察に立ち会って頂けます
普段フォローされる先生方がおられることで、患者さんやご家族の安心感に繋がります
先生方が立ち会われない場合は、診察後に詳細な報告書を郵送します
検査所見に基づき、日々のリハビリ・ケアの内容を先生方や患者さん、ご家族と相談のうえ決定していきます
必要があれば主治医宛の報告書の作成もお手伝いします
※残念ながら、訪問診療は行っておりません。大阪大学歯学部附属病院当部外来にて診察を行います。
予約の取り方
必ず予約をして来院してください 顎口腔機能治療部外来(06-6879-2277 )にお電話いただき「オープンシステムの予約」の旨をお伝えください。先生方からだけでなく患者さんからのお電話でも結構です。事前に先生方が一緒に来院されるかをお知らせください。
オープンシステム診察時間(火~金):
14:00~16:00
電話受付時間(月~金):
9:00~12:00、13:00~16:30
実際の受診方法は?
患者さんに予約していただいた時間に顎口腔機能治療部外来(歯学部附属病院4F 41番)に来ていただきます。大阪大学歯学部附属病院を初めて受診される方は1F受付でカルテを作成していただく必要がありますので、予約時間の15-30分前にお越しください。
持参頂くもの
①先生方からの紹介状(どんな形式でも結構です。紹介状のフォーム をご利用ください。)
②可能であれば主治医からの診療情報提供書
③お薬手帳など投薬内容が分かるもの
④普段食べているお食事、食べてもらいたいお食事 (少量ずつで結構です。)
⑤保険証
不明な点等ございましたら、まずはご連絡ください!
お問い合わせ先:大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部
所在地:大阪府吹田市山田丘1-8
電話番号:06-6879-2277
FAX番号:06-6879-2279
患者さんへ To patient
お口の機能障害ってどんなもの?What are oral function disorders?
うまくしゃべれない、食べられない、飲み込めない、息が吹けない、口がかわく、いびきをかく、寝ているときに息が止まる、これらはすべて口の機能障害です。ふだん当たり前のように使っている口ですが、口はとても大切な役割を果たしています。口がうまく働かなくなると、日常生活にも支障が出てきます。顎口腔機能治療部は、このような口の機能が障害された方を治療しています。
You can't speak well, you can't eat, you can't swallow, you can't breathe, your mouth is dry, you snore, you hold your breath when you sleep.
These all result from oral function disorders.
Normally we use our mouth without thinking about it, but the mouth plays a very important role.
If your mouth doesn't work well, you will have lots of troubles in your daily life.
Our division treats those suffering from oral function disorders.
診療日・受付時間
初診
(初めて受診される方)
月曜日~金曜日 8時30分~11時30分
紹介状をご持参の上、1階の受付にお越しください。
紹介状のない方も、1階の受付にお越しいただき、顎口腔機能治療部を受診したい旨をお伝えください。
初診の場合も、電話にて予約をおとりください。
再診
月曜日~金曜日 8時30分~15時30分 水曜日 8時30分~19時
再診は予約制です。
再診時は、1階の再来受付機に診察券を通した上、4階の顎口腔機能治療部の窓口の「診察券入れ」に診察券を入れてお待ちください。
休診日
土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12月29日~1月3日)
顎口腔機能治療部へのお問い合わせ Contact us
下記時間内にお願いいたします。
月曜日~金曜日 9時00分~17時00分
電話番号:06-6879-2277(顎口腔機能治療部外来直通)
Monday to Friday 9:00 to 17:00
Tel: 06-6879-2277 (Direct communication)
セカンドオピニオンについて
体調の問題などで患者さんご本人が診察を受けることができない場合は、ご家族の方に来院してただき、お話を伺うことができます。 ご希望の際は、お電話にてお問い合わせください。セカンドオピニオン料 30分 約5,000円(税抜)
顎口腔機能治療部の5本の柱Five pillars of the Division for Oral-Facial Disorders
各外来をクリックすると詳細がご覧になれます。
口は消化管の入り口です。食べ物は、口で咬んで飲み込むことにより、初めて消化管に入り栄養となります。咬むこと(咀嚼)や飲み込むこと(嚥下)が上手くいかなくなると栄養状態が悪くなります。栄養状態が悪くなると、体重が減るだけでなく、抵抗力が弱る、筋力が低下する、骨が折れやすくなる、傷の治りが悪くなるなどといった障害がでてきます。栄養状態が手術や病気の予後を左右することも明らかになってきました。 栄養歯科外来では、世界的な栄養管理プログラムであるTNT(Total Nutrition Therapy)を修了した歯科医師が、口の機能が低下した患者さんの栄養管理、治療を行っています。
どのような人が対象ですか?
主に本院に入院中、通院中の患者さんを対象としています。
体重減少が気になる
現在の栄養状態を知りたい
必要な栄養摂取量を知りたい
手術前に体力をつけたい
手術後、口から食事を摂れない
嚥下(飲み込み)障害
このような症状、訴えがある患者さんの栄養管理、アドバイス、治療を行っています。
参考書籍
Total Nutritional Therapy(ワークブック)TNTプロジェクト実行委員会 編
おしゃべりをしているときには、口がいろいろな動きをしています。例えば、「パピプペポ」と言うと上下の唇がついたり離れたりしていますし、「タチツテト」と言うと舌の先が動いて上あごにさわっています。このような動きがうまくいかないと発音に支障が生じます。この状態を「構音障害」といいます。スピーチ外来は構音障害の患者さんの治療を担当する部門です。このスピーチ外来はことばの治療センターとして歴史と実績があり、今日の言語臨床において重要な役割を担っています。昭和48年に口蓋裂の患者さんのことばの治療を担当する部門として発足して以来、口蓋裂だけでも約6,000名の患者さんが来られています。近年は口蓋裂だけではなく、様々な疾患のため構音障害をお持ちになった患者さんの治療にあたっています。治療は専門の歯科医師と言語聴覚士(ことばの訓練士)が協力して、それぞれに合わせたプログラムを作成して治療を行っています。
どのような症状がありますか?
発音するときに息が鼻に漏れる、鼻にぬけたような声になる
正しく発音できない音がある、呂律がまわらない
ことば数は増えたのに発音がはっきりしない、赤ちゃんことばが治らない
口の中の手術を受けた後、話しづらくなった
などの症状で受診される方が多いです。このような症状は、ことばの発達過程でうまく学習できずに出てくることもありますし、下記のような疾患が原因になっている場合もあります。治療の対象は、幼児から高齢者まですべての年齢の方です。
対象となる主な障害ならびに原因疾患
器質的構音障害:口蓋裂、口腔腫瘍、舌小帯短縮症など
運動障害性構音障害:脳卒中、頭部外傷、神経筋疾患(筋萎縮性側索硬化症;ALS、脊髄小脳変性症;SCDなど)など
機能的構音障害:特に疾患はなくても発音に障害がある場合
言語聴覚士との訓練の様子
一人ずつ個室で個別の訓練を行います。
軟口蓋挙上装置
(PLP;Palatal Lift Prosthesis)
口腔の動きを補助する器具をつけて訓練することもあります。
摂食嚥下(食べる、飲み込む)とは①食べ物を認識して口に取り込み、②口の中で食べ物を飲み込みやすい形にして、③口からのどへ、④のどから食道へ、⑤食道から胃へ、送り込む一連の流れをいいます。 その流れのいずれかが障害され、食べ物をスムーズに飲み込めなくなることを嚥下障害と言います。嚥下障害を生じると楽しいはずの食事が苦痛なものに変わってしまいます。また障害が重度になると、食事ができなくなり、肺炎を引き起こすこともあります。 これまではこのような嚥下障害を専門的に評価、治療できる施設がありませんでした。当部では、患者さんのニーズに応え、早期に摂食嚥下専門外来を設置し、これまでに数多くの患者さんを診察しています。
どのような症状がありますか?
当部の摂食嚥下外来では 嚥下障害の方(可能性のある方) すべてを対象に検査、治療を行っています。嚥下障害でよく見られる症状には次のようなものがあります。
食べる速度が遅くなった
やせてきた
食べこぼす
口の中に食べ物が残る
のどの奥に食べ物が残る
食事中にむせる
咳が出る
痰が多い
のどがゴロゴロ鳴る
風邪以外で熱が出ることがある
食べ物がつかえる
飲み込みにくい
食べ物や胃液が逆流する
離乳食のステップアップができない(小児)
哺乳量が増加しない(小児)
具体的には下記のような方が多く受診されています。
成人の方は・・・
口腔や咽頭の手術後
脳卒中後
高齢者
神経筋疾患(例:ALS、パーキンソン病、筋ジストロフィーなど)
小児の方は・・・
病気のため口から食事をとったことがない
脳性麻痺
発達遅滞
どのような検査がありますか?
嚥下障害の内容や症状の程度にもよりますが、検査をすることで「どこに問題があるのか」、「どうすれば問題が改善するのか」がよくわかります。嚥下機能をみる代表的な検査に嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)があります。その他にも(検査ではありませんが)、実際の食事の様子を確認することも嚥下障害の原因の発見や解決に役立ちます。
嚥下造影検査(VF;VideoFluoroscopic examination of swallowing)
レントゲン室で行う検査です。造影剤入りの食事を食べているところをレントゲン動画で撮影、記録します(図1)。嚥下の一連の動作(食事を咀嚼して胃まで送り込む)を観察でき、誤嚥の有無を観察できます。
検査場面
検査画像
図1 嚥下造影検査(VF)
嚥下内視鏡検査(VE;VideoEndoscopic examination of swallowing)
鼻から細いカメラ(ファイバー)を通して安静時、嚥下時の喉の奥を観察します(図2)。少し違和感はありますが、放射線の被ばくがなく、検査機器を持ち運べるので場所を選ばず検査できます。また普段の食事の様子をみることができます。
検査機器
検査場面
検査画像
図2 嚥下内視鏡検査(VE)
どのような治療をしますか?
問診や診察から、どのような経過、原因で嚥下障害が起きているのかを診断します。原因の病気を踏まえた上で、必要に応じて嚥下機能検査、食事観察により嚥下機能を評価し、リハビリや対応法を考えます。具体的には病気に合わせて、以下のような回復を期待して訓練する方法やその人の機能を最大限に生かせるような環境を整えるお手伝いを行います。
嚥下訓練 :食事を実際に使う場合と使わない場合がありますが、どちらも嚥下機能の改善・維持を期待して行います。
口腔内装置 :舌を切除した方、舌の動きが悪い方などを対象に飲み込みを助ける装置を作製します。
代替栄養法を含めた栄養指導 :口から全量栄養摂取が困難な方には経管栄養法〈チューブから栄養を注入する〉や栄養補助食品を利用し栄養指導します。
食環境改善の指導 :料理方法の工夫や食事時の姿勢など、より安全に楽しく食事できるよう指導します。
参考書籍
開業医のための摂食・嚥下機能改善と装置の作り方超入門(クインテッセンス)
前田芳信・阪井丘芳 監著、小野高裕 編著、野原幹司、小谷泰子、堀 一浩 他著
認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション(南山堂)
野原幹司 編、山脇正永、小谷泰子、山根由起子、石山寿子 著
終末期の摂食・嚥下リハビリテーション~看取りを見据えたアプローチ~(全日本病院出版会)
野原幹司 編
睡眠中にいびきをかいたり、呼吸が止まったりする方はいらっしゃいませんか? 睡眠歯科外来では、スリープスプリントというマウスピースを使って、いびきや無呼吸の治療をしています。
どのような症状がありますか?
睡眠中に呼吸が止まる時間や頻度が多くなると、深い眠りができずに、寝起きが悪くなったり、日中につい居眠りをしてしまったりするという症状が出てきます。このような病気を睡眠時無呼吸症といいます。いびきは無呼吸の前症状です。 最近では、さまざまな事故の引き金になっていることが分ってきて、社会的にも問題になっています。また、高血圧や心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病の悪化因子にもなると言われています。 睡眠時無呼吸症の中でも、体重が多かったり、扁桃腺が大きかったり、顎が小さかったりすることが原因で、気道が狭くなっている場合を閉塞型睡眠時無呼吸症といいます。これとは別に、脳幹から呼吸筋への指令の異常が原因になっているものを中枢型睡眠時無呼吸症といいますが、実際には9割以上の方が閉塞型睡眠時無呼吸症です。歯科で対応できるのは、閉塞型睡眠時無呼吸症です。
どんな検査?
睡眠歯科外来では、頭部側方レントゲン写真、内視鏡などにより、のど・口のどこに原因があるか検索します。そして、スリープスプリントにより治療が可能かどうかを診断します。 しかし、実際には睡眠中にどのくらい無呼吸や低呼吸があるのかが睡眠時無呼吸症の最終診断になりますので、睡眠検査(終夜PSG検査)ができる医療機関を紹介して検査を受けていただきます。
頭部側方レントゲン写真
内視鏡検査(左:鼻咽腔、右:中下咽頭)
どのような治療をしますか?
睡眠歯科外来では、下顎(下あご)を前方に突き出した状態で上下のあごを固定するスリープスプリントというマウスピースを使って治療します。これは、仰向けで寝ているときに落ち込んだ舌やのどちんこを前方に引き出し気道がつぶれないようにする装置です。もちろん、昼間はつける必要はなく、寝ている間だけつける、つけはずし可能な装置です。
スリープスプリント
スリープスプリントによる気道確保の仕組み
スリープスプリントを装着すると下顎が前に固定されることで舌も移動するので気道が確保されます。
左は装置を装着する前、右は装着した時の横から見たところです。
装置を装着することで下顎が前にでている状態が維持されます。
参考書籍
歯科医師の歯科医師による歯科医師のための睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療(医歯薬出版)
阪井丘芳 監修、奥野健太郎 編、奥野健太郎、野原幹司、佐々生康宏、小谷康子 著
ドライマウスとは日本語で口腔乾燥症のことをいいます。唾液分泌の低下だけでなく、口が乾いていると自覚する症状すべてを指すことになります。(ドライマウスは病名ではありません。)
どのような症状がありますか?
口が渇く、のどが渇く、口の中がネバネバする、パンやクッキーなどを食べられない、味がおかしい、食べ物を飲み込むのがつらいなどの症状があります。
口腔乾燥症とカンジダ症
口が乾燥していると、真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌が増殖しやすくなり、粘膜の萎縮や赤みや痛みがでてきます。
原因は何ですか?
何らかの原因(糖尿病、腎臓疾患、シェーグレン症候群、薬剤の副作用、ストレス、脳血管性障害、老化など)で唾液が減ってしまうために起こります。ドライマウス自体は病気ではありませんが、原因になる何かの病気があると考えられます。
唾液の作用は何ですか?
唾液は、食べる、飲む、話すといった人間にとって欠かすことのできない口の機能を営む上で、重要な役割を果たしています。具体的には、消化作用、抗菌作用、免疫作用、洗浄作用、歯の再石灰化作用、粘膜保護作用、粘膜修復作用などの作用があります。さらには、傷を治す上皮成長因子(EGF)や脳神経の老化を防止する神経成長因子(NGF)などを含むことからも、口腔内だけでなく、体を守る意味でも重要な役割を果たしています。
どのような検査がありますか?
問診(病態を知るための大切な情報です)
唾液の量の検査(何もしていないとき(安静時)とガーゼやガムを噛むとき(刺激時)の唾液の分泌量を量ります)
口腔内の湿潤度を測定(粘膜の潤い度を数値で表します)
唾液腺の検査(レントゲンやMRI、 CT、 唾液腺造影で確認します)
血液検査(体の病気を調べるために、血液検査をする場合もあります)
シルマーテスト(涙の量の検査:シェーグレン症候群の検査として行います)
口唇生検(シェーグレン症候群を疑う場合、局所麻酔をして、下唇の内側から小唾液腺を摘出し、検査する場合もあります)
刺激時唾液分泌検査(サクソンテスト)
清潔なガーゼ2枚を2分間咀嚼し、ガーゼに浸透した唾液の重さを測定します。
口腔湿潤計(ムーカス)
湿潤度計のセンサー先端部をケースでカバーし、粘膜に接触させて口腔内の湿潤度を測定する。
どのような治療方法がありますか?
カウンセリングや心身医学的アプローチ
唾液腺を刺激する(唾液腺刺激療法、マッサージ等)
粘膜疾患への対処(含嗽薬、軟膏、飲み薬:抗真菌薬等)
粘膜の保湿(保湿剤を配合した洗口液、ジェル、スプレー、人口唾液、保湿装置)
唾液の分泌を増やす(塩酸セビメリン、漢方薬など)
歯科的治療(唾液の減少でう蝕や歯周病になりやすいので治療やクリーニングをするだけでなく、本院他診療科やかかりつけ医との共観により、よく噛めるように歯の治療をする)
ドライマウスの原因が明らかで、糖尿病や貧血など病気が原因の場合には、その病気に対する治療を受けることが必要です。ところが、加齢的変化や放射線治療後など治療が容易でない場合には、ドライマウスの症状に対する対症療法(症状を緩和する)しかありません。最近では、対症療法も格段に進歩していますので、治療効果を高めるためにも早期診断・治療が重要です。少なくとも症状が緩和できればQOL(Quality of Life)の向上につながりますし、乾燥に起因する合併症の予防にもなります。対症療法といえども、積極的に治療を受けることをお勧めします。
参考書籍
ドライマウス診断・治療マニュアル(Dry Mouth Society in Japan)
ドライマウス ~今日から改善・お口のかわき~(医歯薬出版)阪井丘芳 著
高齢者のドライマウス ~口腔乾燥症・口腔ケアの基礎知識~(医歯薬出版)阪井丘芳 著
超高齢社会におけるドライマウスへの対応 ~いま、ドライマウスにどう取り組むべきか~(HYORON)
斎藤一郎 編著、阪井丘芳・豊福 明、中川洋一、中村誠司 著