研究活動・業績

近年の主な研究活動

組織培養研究部門

口腔外科学第一教室の培養研究室では、

  • 唾液腺癌細胞の細胞特性と分化誘導療法に関する研究
  • 口腔扁平上皮癌細胞の浸潤機序の研究
  • 口腔癌リンパ節転移と遠隔転移に関する研究
  • 唾液腺発達に関する研究
  • 顎骨腫瘍・嚢胞の骨吸収機序に関する研究を中心に行っている。

唾液腺腫瘍研究の結果、正常唾液腺上皮細胞のみならず、唾液腺癌細胞も細胞外基質ラミニンとの接着によって3次元培養環境下では、導管上皮細胞から腺房細胞に最終分化しうることが明らかとなった。このことから、細胞増殖する癌細胞を増殖停止した腺房細胞へと分化誘導する治療法開発の可能性が示唆された。実際に、ヌードマウス皮下に移植された唾液腺腫瘍に対してラミニンゲルを注入することにより、腫瘍増殖は抑制された。その結果、担癌マウスの生存は延長し、腫瘍組織型もアミラーゼを産生する腺房組織に分化することが示された。

顎骨腫瘍や顎骨嚢胞の増大や骨破壊・骨吸収に関する研究の結果からは、顎骨腫瘍・嚢胞の歯原性上皮細胞はTGF-やIL-1を産生し、腫瘍・嚢胞の間質線維芽細胞での破骨細胞促進因子(RANKL)発現を促進することが明らかとなった。IL-1は間質線維芽細胞のCOX-2タンパクを誘導し、PGE2合成を促進してRANKL発現を誘導する機序が見つかっった。一方、TGF-はCOX-2, PGE2経路ではなくRANKL発現を誘導し、IL-1とTGF-両者の刺激で相乗的にRANKL発現が促進されることも見出された。これらのRANKL発現誘導機序を通じて、病変骨境界部に破骨細胞を誘導することが、病変の顎骨内進展、骨吸収の一機序となることが示唆された。

口腔癌臨床研究は、口腔癌のリンパ節転移様相、好発転移領域、リンパ節後発転移に関する臨床データ解析から、所属リンパ節に対する一次治療の決定樹解析研究が行われている。さらに、舌癌の所属リンパ節転移予測因子の解析を行った結果、舌動脈を含む傍舌隙と腫瘍との距離が最もリンパ節転移の有無と強い相関関係にあることが明らかとなり、現在ではその産出された閾値をもとに治療方針決定の一助となっている。

口腔生理研究部門

当教室ではこれまでに機能を温存したin vitroの実験系である遊離脳幹標本(Isolated brainstem preparation technique)を咀嚼運動の分野に独自に応用して、

  • 咀嚼運動は呼吸や歩行運動同様に上位脳幹レベルにおけるcentral pattern generator(CPG)により運動の基本パターンが形成される(Kogo et al., Somatosens. Motor Res. 13, 39-48, 1996)
  • 咀嚼運動に関わるCPGは左右両側に開口筋、閉口筋それぞれに独立し、尾側脳幹レベルのモノアミン投射系により制御されている(Kogo et al., Somatosens. Motor Res. 15, 200-210, 1998; Tanaka et al., Brain Res. 821, 190-199, 1999) ことを明らかとしてきた。

2006年からは三叉神経運動ニューロンにおける三叉神経可塑性について同様の手法を用いて検討を行ってきた。その結果、三叉神経運動核を刺激することで、三叉神経運動根からの神経活動が増強すること、単一細胞として三叉神経運動ニューロンの活動性は、Induction刺激にてその興奮性が増強し、長期に継続することが認められ、咀嚼筋に神経シグナルをおくる三叉神経運動ニューロンが内因性の神経可塑性をもつことを明らかとした(Okamoto et al., Brain Res. 1312, 32-40, 2010)。つまり、顎運動の生理的な機能の変化に関連する機能的順応に影響を与えている可能性が示唆され、今後の口腔外科領域や嚥下・摂食のリハビリ領域などの発展につづくと考えられる。

また、2009年からは、摂食中枢が刺激される際に分泌される摂食促進神経ペプチドであるオレキシンに着目し、出力先となる顎運動パターンとその基礎となる脳幹レベルの咀嚼リズム形成機序とそれに関わる個々のニューロン特性への影響について検討を行っている。これまでに、行動生理学的実験において、オレキシンA投与条件下では、摂食量だけでなく他の摂食行動特性さらには顎運動にも影響を及ぼすことが明らかとなり、オレキシン活性レベルの調節は、捕食から嚥下に至る能動的な摂食行動を制御する要因の一つと推測された(Tsuji et al., J. neurophysiology 106, 3129-3135,2011)。

現在、三叉神経根からの出力に関わる運動核ニューロン、中脳路核ニューロンのオレキシンによる膜特性変化についてWhole-cell patch-clamp recording法を用いて詳細に検討中である。

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