歯科保存学教室

歯科保存学の未来への扉を開く        林 美加子

 大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)は,昭和26年4月に国立総合大学初の歯学部である大阪大学歯学部の創立時に発足した教室で,その源流は,初代教授である弓倉繁家先生が主宰しておられた府立大阪医科大学とその後継にあたる大阪帝国大学医学部の歯科学教室にさかのぼることができます.それ以来,嶋 良男先生(昭和28年4月着任),土谷裕彦先生(昭和42年12月着任),恵比須繁之先生(平成8年1月着任)と引き継がれ,平成24年4月から林が第5代主任教授として教室の運営にあたっております.教室も年ごとに規模が拡大し,現在では在籍者が常時40名を超える大きな組織に発展し, 臨床教室として教室員それそれが研究・教育・臨床に取り組んでいます.

 

 研究では,創設当初は,病理組織学的な研究や窩洞形態に関する研究に加え,アマルガム修復を中心とした研究を行っておりました. 土谷教授の時代に,アマルガムに代わってコンポジットレジン修復や修復物の2次う蝕の抑制に関する研究が推進され,さらに恵比須教授の時代には,遺伝子工学や分子生物学的手法を積極的に取り入れ,「デンタルバイオフィルムと根尖性歯周炎の関わり」に代表される, より生物学的な視点に立った研究が幅広く展開されました.

 

 現在は,その流れを受けて,「基礎研究の臨床への展開」と「エビデンスの創出を目指す検証的臨床研究の推進」を大きな柱に据えて,教室のメインテーマである「オーラル・バイオフィルムの機能解析および抑制法の開発」,「物理化学刺激による歯の強化法の開発」,「骨・歯髄・歯周組織の再生」,「新次元の歯科材料・機器の開発」および「既存・新規治療法に関する臨床評価」について, 世界トップレベルの研究拠点として精力的に活動しています.

 

 教育では,卒前教育として「保存修復学」と「歯内療法学」の講義, 基礎実習,および臨床実習を担当しており,卒後教育でも実技演習, 症例検討会,および各種セミナーを有機的に組み合わせた臨床研修プログラムを実施して,診断能力と治療技術を兼備えた歯科医師の育成に務めております.一方,大学院教育では,前述の高次元の研究を通して,グローバル世界で活躍できる国際性や,柔軟かつ広い視野をもった人材育成を目指しています.

 

 臨床では,日本歯科保存学会保存治療専門医・指導医や日本接着歯学会認定医を中心に,ミニマルインターベンションの理念に基づいて,歯質および歯髄の保存を最優先にした接着性材料による保存修復治療や,先進医療としての歯科用マイクロスコープとCT画像診断による難治性根尖性歯周炎の治療,医科との連携が必要な有病者の治療,垂直歯根破折歯を含む外傷歯,金属アレルギー,酸蝕症など,う蝕・保存修復・歯内療法の専門外来として,エビデンスに基づく医療の実践をとおして地域医療に貢献しています.

 

 今後も,研究・教育・臨床のそれぞれの機能的な融合を図りながら卓越した成果を上げるべく邁進して参る所存ですので, 何卒ご支援のほど, どうぞ宜しくお願い申し上げます.


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