外来・診療スケジュール

口唇裂・口蓋裂外来

口蓋裂と言語治療

大阪大学歯学部附属病院では顎口腔機能部 ( がくこうくうきのうちりょうぶ ) という専門の科が設置され、そこで言語治療が行われております。 手術により形や筋肉が整えられた軟口蓋を自由に使いきれない子供たちや構音に特徴的な異常が生じる子供たちがあります。このような子供たちを早期に発見し、正しく導いてやるために、大阪大学では口蓋裂の全患者さんに手術後の言語治療を受けていただいております。

治療の内容は患者さん個々によって異なりますが、鼻咽腔閉鎖運動 ( びいんくうへいさうんどう ) が不十分な患者さんでは以下のスピーチエイドの装着や咽頭弁の移植術を併用することがありますが、ほとんどの患者さんは正常な言語を獲得します。

1. スピーチエイド

鼻咽腔閉鎖が自力で獲得できない患者さんに対して、鼻咽腔閉鎖運動の補助を目的として口の中に装着する床型の装置です。鼻咽腔閉鎖の感覚を覚えさせるもので、永久的なものではなく、多くは後の言語訓練によりこの装置が必要なくなります。また、完全な鼻咽腔閉鎖運動が得られずに、次に述べる咽頭弁移植術を受ける場合でもこの装置を装着していただくことで、手術後の言語の獲得はスムーズに行えます。

2. 咽頭弁移植術

十分な言語治療を受けた患者さんで、鼻咽腔が大きすぎて自力で鼻咽腔を閉鎖できない患者さんを対象にして行われる手術です。この手術は軟口蓋の組織と弁状に形成した咽頭の後壁(のどの奥)の組織をつなぐことにより、広すぎる鼻咽腔をせまくする手術です。これによって咽頭の筋肉と軟口蓋の筋肉の強調運動ができるようになり、結果として良好な鼻咽腔閉鎖運動が行えるようになります。

口唇口蓋裂の矯正治療

1. なぜ矯正治療が必要なのか

 口唇口蓋裂のお子さんでは、手術の影響で上あごの成長が十分でなく、受け口(前歯部反対咬合)や奥歯の噛み合わせが反対(臼歯部交叉咬合)になる場合があります。また歯の数の不足や、個々の歯の位置の乱れを認める場合もあります。このため歯並びや咬み合わせ、顔立ちに影響がみられ、歯科矯正治療により歯を動かしたり、あごの成長を助けたりする必要のある方がほとんどです。治療は一人ひとりのお子さんの症状に合わせ、時期を見計らって進めていきます。

2. 主な治療の流れ

成長期のお子さんの矯正治療 : あごの骨の成長をコントロールする矯正治療

・上あごの横幅を拡げる治療

  上あごの成長障害により上あごの横幅が狭いと、奥歯の咬み合わせが反対になったり、歯並びががたがたになったりします。このため、上あごの横幅を矯正装置により拡げる必要があります。上あごの横幅が拡がるとともに残遺孔も大きくなり、飲み物が鼻に抜けたりストローで飲み物を吸えなくなったりすることがあります。この場合、顎口腔機能治療部と連携して矯正装置に残遺孔を塞ぐような工夫を施します。

・受け口を改善する治療

上あごの成長障害により受け口となっているお子さんには、上顎骨前方牽引装置(プロトラクター)と呼ばれる矯正装置を用いて、上あごの前方への成長を助ける治療を行います。また、上の前歯が後ろに傾いて受け口になっている場合は、リンガルアーチと呼ばれる矯正装置により、上の前歯を前方へ傾斜移動させます。

・顎裂部骨移植術

乳幼児期に口唇裂や口蓋裂の手術を行うと裂は無くなったようにみえますが、骨の中(歯槽部)に裂隙(顎裂)は残っています。顎裂の部分には歯を並べることができないため、この部分に骨を埋める手術が必要となります。顎裂部に埋める骨は、オトガイ部の骨あるいは腰骨(腸骨)から採取します。手術の時期は通常、犬歯が生える前の8~10歳頃を目安にしていますが、移植に必要な骨の量や採取する部位、歯の生えかわりや歯科矯正治療の進行状況、体格などに応じて、お子さんごとに時期を決定しています。


成長が終了した段階の矯正治療 : 最終的な咬み合わせを目標にした矯正治療

・マルチブラケット装置を用いた矯正治療

咬み合わせの変化はあごの成長が終わる16~18歳まで続きます。従って、早くから治療を始めて一度良い咬み合わせになっても、あごの成長により再び悪くなることもしばしばあります。永久歯が生えそろい、あごの成長と咬み合わせの変化が終了すると、最終的な咬み合わせを目標にマルチブラケット装置を用いた矯正治療を開始します。

・外科手術を伴う矯正治療(外科的矯正治療)

成長終了後も上下のあごの骨の位置関係に著しい不調和が認められる場合は、手術によりあごの骨のバランスを整える必要があります。

・外科的矯正治療の一般的な流れ

① 術前矯正治療:手術後の咬み合わせを想定して、上下の歯並びを改善します。

② あごの骨切り術:上下の歯並びが咬み合うように手術で骨を移動させて、金属のプレートで固定します。咬み合わせが安定するよう上下の歯並びをワイヤーあるいはゴムで固定します(顎間固定)。

③ 術後矯正治療:咬み合わせの仕上げの治療を行います。

・骨格的な受け口を改善する手術の方法

上顎骨切り術: 後退した上あごの骨を前方移動します。

下顎骨切り術: 下あごの骨を後退させます。

上下顎同時骨切り術: 上顎骨骨切り術と下顎骨骨切り術を同時に行います。

上顎骨仮骨延長術: スピーチの機能を考慮した上あごの手術法です。上顎骨切り術により上あごの骨全体を前方に移動させると、喉の奥が広くなり鼻咽腔閉鎖機能が低下してスピーチに問題が生じる場合があります。この問題をできるだけ回避するために、上あごの骨を前方へ延ばす手術方法です。

・保定

矯正された歯やあごの後戻りを防ぐために保定装置(歯並びが乱れないように維持する装置)を装着し、年に3~4度、歯並びと咬み合わせのチェックを行います。また、歯の無い部分があれば、インプラントやブリッジ、入れ歯などを入れます(補綴治療)。

3. チームアプローチの必要性

口唇口蓋裂がある場合、言語治療、顎裂部への骨移植、外科的矯正治療、補綴治療、虫歯治療などが行われるため、 各科が連携をとって治療にあたります。

4. 治療費について

矯正治療は通常自費診療ですが、口唇口蓋裂のお子さんに対する治療は、本院や指定された矯正歯科医院では、健康保険が適用されます。また育成医療等の公費補助によって自己負担金が一定額以上、免除される制度もあります。担当医にお尋ねください。

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