研究活動

糖アルコールの歯周病予防効果の検討

糖アルコールは、糖が還元されてアルコールとなったもので、キシリトール・マルチトール・ソルビトール・エリスリトール等に代表される。多くは砂糖の代用甘味料として用いられるが、低カロリー性やインスリン非刺激性などの特徴により特定保健用食品や病者用食品などに広く応用されている。これまで、糖アルコールの抗う蝕作用が多く報告されてきたが、う蝕と並び有病率の高い歯科疾患である歯周病に対する効能は明らかではなく、一部の糖アルコールでプラーク除去促進作用などが検討されてはいるものの、歯周病菌の生育やバイオフィルム形成への影響といった歯周病臨床応用につながる報告はほとんどない。 また、デンタルプラークは多種多様な混合菌種バイオフィルムである。その形成は、まずStreptococcus属やActinomyces属などに代表されるグラム陽性の初期付着菌が歯面ペリクルに付着することから始まる。初期付着菌がさらに増殖しバイオフィルム形成が開始されると、様々な菌体間相互作用を介して、中期定着菌Fusobacterium nucleatumや、主要な歯周病菌Porphyromonas gingivalisなどの後期定着菌バイオフィルムに取り込まれて、より複雑な混合菌種バイオフィルムが形成される。 近年、生物学研究に用いる手法が劇的に変化しつつあるなかで、最も急速な進歩を遂げているのがオミクス研究である。トランスクリプトミクス(mRNA)、プロテオミクス(タンパク質)、メタボロミクス(代謝産物)等のオミクス研究は、細胞や生体内の多数の構成成分の変化を網羅的に探索し、生命現象を包括的に理解しようとするものである。mRNAレベルおよびタンパク質レベルでの細胞の変化を把握することは遺伝子機能を理解するうえで必須の情報であるが、さらに最終生成物である代謝物質の情報を組み合わせることにより、生体内全体に引き起こされる現象を包括的、機能的に解明できる。本研究では、オミクス、特にメタボロミクスを研究手法として、糖アルコールによるバイオフィルム形成阻害機構の解明を試み、その歯周病予防効果を検討している。